村上春樹を読んでみたけれど
もともと僕には、小説を読む趣味があまりなかった。
本を読んだ記憶として印象的なのは、中学一年生のときに少しだけ星新一にハマったことくらいかな。
数学の授業中にその本を読んでいたら先生に見つかって、担任の先生に報告されて、職員室で怒られたことがある。
それからは、進学校だったというのもあるし、部活をやっていたというのもあるのかわからないけれど、あまり本を読む機会がなかった。
何かと追われているというか、生き急いでいるというか。そんな人生だった気がする。
でも、僕も二十代後半に差しかかって、少し落ち着いてきた。
仕事もそんなに苦じゃないし、仕事が終わったあとには自分の時間がある。
それで、ちょっと本でも読んでみようかなと思った。
きっかけの一つは、昔付き合っていたM**の存在だった。
彼女は僕と付き合っていたときもよく本を読んでいて、持ち歩いていた。
村上春樹の『海辺のカフカ』を読んでいたのは覚えている。『1Q84』も読んでいた気がするけど、確実に見かけたことがあるのは『海辺のカフカ』かな。
別に彼女が村上春樹をすごく愛読していたとは限らない。
でも、彼女が何を考えていたのか、どういう世界に生きていたのか。それを少し知りたかった。
それで本屋に行った。
最初は『1Q84』を読もうと思っていた。有名だし。
ただ、書店に行ったら、カップルで来ていた女性のほうが、僕の目の前でさっとその本を見つけて手に取ってしまった。
それで、その場から『1Q84』がなくなってしまった。
店員さんに言えば出してもらえたのかもしれないけど、まあ、他の本でもいいかと思った。
ただ、その女性のおかげで、村上春樹の本が新潮文庫からたくさん出ていることを知った。
そもそも僕は、村上春樹の本がどこにあるのかもよくわかっていなかったから。
その女性が結構大きな声で本を見つけていたので、どうやらこの棚にあるらしい、ということがわかった。
それで村上春樹のコーナーを見ていたら、一番右端だったかな、『街とその不確かな壁』があった。
別にタイトルにすごく惹かれたわけでもない。
なんとなく新しそうだったから選んだのかな。今となってはよくわからない。
あとからわかったけど、たぶん文庫になったのが新しかっただけなんだと思う。
読み終わったあとにあとがきを読んで知ったんだけど、この作品は第一部が昔一度書いたものをリメイクしたもので、そこに第二部と第三部を付け足したらしい。
村上春樹があとがきを書くのは珍しいらしい。
まあ、珍しいというのも、本人があとがきにそう書いていたから知っただけなんだけど。
で、肝心の感想なんだけど。
あまり面白くなかった。
単純に、僕は村上春樹があまり好きじゃないのかもしれない。
そもそもそんなに小説を読んできたわけじゃないから、本の良し悪しなんてあまりわからないんだけど。
でも、面白いとは思えなかった。
フィクションにしては、話があまり面白くない。ワクワクしないし。
かといってリアリティを追求しているんだとしたら、それもなんだか違うというか。感覚がずれている気がする。
それが古いからなのか、僕の感覚がずれているのか、ちょっとよくわからない。
とにかく、あまり面白くなかった。
で、そのあとに読んだのが、伊坂幸太郎の『アイネクライネナハトムジーク』。
これも数年前から僕の本棚にあった本で、当時少しだけ読んでいた。
それこそM**には、読み終わったら貸して、なんて言われていた本だった。
今は八割方読み終えていて、一番最後の章に入ったところ。
伏線がすべて回収されるというか、そもそも途中からずっと伏線回収の連続なんだけど。
これがすごく面白い。
すごく読みやすいし、物語に入っていける。
読みやすいというのもそうなんだけど、とにかく面白い。笑えるというか。
他人の人生を覗き込んでいるような気分になれる。
少しだけ、生を実感できるというか。
なんか、そういう感覚がある。
最近はリール動画なんかが流行っていて、僕もつい見てしまう。
いわゆるドーパミン中毒みたいな状態になっていて、短い動画を延々と見てしまう。
そういう生活から少し脱却したいと思って、最近はあまり音楽も聴かずに、本を読むようにしてみた。
これが案外よくて。
なんというか、少しだけ自分の人生が豊かになった気がする。
そういえば、伊坂幸太郎といえば『ゴールデンスランバー』。
小学生の頃に映画を観て、すごく面白かった記憶がある。
堺雅人が出ていて、それこそ浜田学も出ていた。二人とも『VIVANT』に出ているよね。
あの映画も面白かったから、また観たいなと思って探してみたんだけど、どうも今は配信していないらしい。
U-NEXTですら配信していなかった。
権利で揉めたのかなんなのか、よくわからないけど。
どうやって観ようかな、なんて思っていた。
でも、まあ、本で読めばいいじゃないかと。
伊坂幸太郎の小説がこんなに面白いんだから、『ゴールデンスランバー』も読んでみたい。
そんなことを思った。
本を読むのも、案外いいものだなと思う。